2021年8月28日土曜日

光を待ちながら

 4月下旬に引越してきた。何度も引越しを繰り返すことになってしまった(事情等は前回の記事に)ため、さすがに手続き類は慣れてきた。ネット環境の空白期間をできるだけ短くするためには、早めの申し込みが必要だと身に染みてわかっていたから、引越日を決めた段階ですぐに手続きをした。ソフトバンク光を利用していたので、引越し先でもそのまま利用することにした。問題なかったし、料金も妥当だと思っていたし、引越しの工事代も無料だとHPに掲載してあったため、ほとんど迷わなかった。(ちなみに、一昨年、前の部屋に越すまでは、yahooBBのADSL回線を使っていた。)

 引越しの翌日、NTTから工事の人が来た。契約するのはソフトバンクだが、土台はNTTの光回線なのだ。NTTのモデムまで開通した後、ソフトバンクの光ユニットをつなげる形になる。

 部屋の様子を見た工事の人に「これは工事費がかかりますよ」と言われた。電話回線が見当たらないというのだ。古い団地の部屋だが、建物自体に光回線が来ていることは知っていた。そのため「工事代無料」で大丈夫だと考えていた。下見の時には気づかなかったが、確かに電話線が見当たらない。ここから出ていたのだろう、という場所はあるが、線が出ていないのだ。携帯が普及して電話線は必ずしも基本的なインフラじゃなくなっているのだろう。リフォーム時に切ってしまったようだ。ソフトバンク光のマンションタイプというのは、アナログの電話回線を利用して、光回線につなげるシステムになっており、電話のジャックがないなら、室内工事が必要で、トータル1万円くらいかかるというのだ。

 作業員さんはいい人で「この代金は、ソフトバンクの無料には含まれないはず。確認された方が良いのでは」と言ってくれたので、ひとまず引き取ってもらって、経費についてソフトバンクに問い合わせることにした。

 問い合わせは、共通のサービスセンターへの電話しか方法がない。メールアドレスや問い合わせフォームなどもないのだ。

 仕方なく、サービスセンターに電話する。自動音声が流れる。


「なんとかは何番、かんとかは何番……を、押してください、ただいまたいへん電話がつながりにくくなっております、このままお待ちいただくか、後程またおかけなおし下さい」


 というアナウンスとBGMを聴きながら待つこと30分。ようやく「人間」にたどりつく。

 事情を説明すると、それは工事の人が言うだけのお金がかかる、との返事。何でそうなるのよ。疑問点についていろいろ訊ねるも「そうなってます」の一点張り。それならば仕方がない。引越しで金がかかった上に、予定外の1万はきつい。どうするか、大変困った。とりあえず、大家に出してもらえないか交渉することにして、ソフトバンクには一旦保留としてもらう。

 

 この時、保留が、どれほど長く続くことになるか、想像すらしていない「よどがわ」であった。

 

 開通までは「ソフトバンクエア」という無線のモデム(というのが合っているか分からないが)を代替で使えることになった。当然、無料。ただ、機械が届くまで3日間は、ネット無し生活。同居人と飯を食う時間、ネット動画を見るのが常だったが、いつもはしまってある短波ラジオを取り出して来て、電波の強い北京放送の日本語番組を聴いたり、韓国語のラジオを流してみたりして寂しさをまぎらした。(※引越し後、テレビはもう無しにするか、という感じになっており、つなげていない。)

 引越しの段ボールの山の中で、ラジオを聴くのは、「非常時」感があって少しだけ楽しいところもあった。一年前にも同じことしてたな、と思いながら。ただ、仕事の上では大変困った。とくに急ぎでオンデマンドのリモート講義をアップする必要があり、家でデータを作って駅前のネットカフェに行ってアップしなければならなかったりした。こういうことにならないように、早めに引越し手続きをしていたのに…。

 

 「ソフトバンクエア」は、前の引越しで、初めてソフトバンク光に申し込んだ時にも開通までの間に利用した。その時は、かなり快適に使えて、ごちゃごちゃしている有線より、部屋もスッキリするし、これの方がいいかもと思ったくらいだったのだが、新しい環境では通信速度が遅く、止まってしまうことも多く不便だった。

 

 家主に相談したところ、電話回線を引きたいなら自費でやってくれとの解答だった。どうするか、悩む。他のプロバイダと新たに契約するにしても、部屋の状態がこれならどのみち工事費がかかるかもしれない。それなら仕方がないか、とあきらめて、金を払って工事をしてもらうことにした。

 サービスセンターに電話する。


「なんとかは何番、かんとかは何番……を、押してください、ただいまたいへん電話がつながりにくくなっております、このままお待ちいただくか、後程またおかけなおし下さい」

 

 また、30分近く待たされてようやくつながる。あらためて、工事の依頼をする。すると、工事日は一か月近く後だと言われる。仕方がない。しばらくはエアでしのぐしかない。ネットサーフィンくらいはなんとかなるけど、300MBくらいのデータ(一コマの講義動画がそれくらいになる)をアップする、とかになると、何分も時間がかかったりして、かなり不便ではあったが。

 

 5月21日、NTTの作業員再来訪。前と同じ人だった。工事費の概算を再確認して「分かりました」と了承し、作業開始。すると、何ということでしょう、天井の蓋を開けると、中から電話回線が出てきたのでございます。「この線、生きていたら、工事費かかりませんよ!」と言われ、パッと明るい気持ちになる。実は、1万円かかる工事というのは、モデムをおきたい場所まで電話線を配線するだけなのだ。不格好だが、天井から垂れている電話線にそのままつなげて使えるなら、ソフトバンクの工事費無料サービスにおさまる、とのこと。幸い、線は生きていてそのまま使えるようだった。「良かったですね」と作業員。こっちは1万払うのを了承しているのだから、知らんぷりして工事しても気づかなかっただろうに、良心的だ。光回線との接続も確認して「ちゃんとネットにつながりましたよ」ということで帰っていった。こんなことなら、引越しの次の日に来てもらった時に、そのままやってもらっておけば良かったな、と思うもアフターフェスティバルだ。


 引き上げ間際「ソフトバンクのユニットと接続もしましょうか」と言ってくれたが、そんなの簡単だろうと「大丈夫です、自分でやりますよ」と答えてしまった。これは痛恨のミスだった。この時点で確認しておけば、次の展開もスムーズだっただろうに…。

 

 作業員が帰った後、ソフトバンクのユニットとつなげてみた。引越しから一か月もかかってしまったな、ようやくだな、と思いながら。

 しかし、つながらない。ソフトバンクのユニットとNTTのモデムとの間の連携がうまくいかない。

 

 サービスセンターにまた電話。

 

 「なんとかは何番、かんとかは何番……を、押してください、ただいまたいへん電話がつながりにくくなっております、このままお待ちいただくか、後程またおかけなおし下さい」でようやく人間に…。

 

 調べてみるのでちょっと待て、というような話だった。

 

 〔※このあたりの時期のやりとりの記憶は、一部不確かなところもあります。ことが進み(というか進まず)これは記録しておかねば、という気になって意識的にメモを残すようになったから、本文の後半はほぼ事実通りのはず。〕

 

 一週間くらい経過しても何の連絡もなかった。しびれを切らして、こちらから電話する。もう5月末になっている。

 

 「なんとかは何番、かんとかは何番……(以下省略)」ようやく人間につながる。

 

 「ネットがつながらない、というお問い合わせですね。では担当者にお繋ぎします」とまた待たされる。

 

 ランプの確認、線の確認、端末のリセット、その他、言われるままにやる。これは、前に電話した時もやらされたことだったが。「それでもつながりませんか」と来たから、これまでの経緯を一から説明する。こっちからしないといけないってどういうことだ、と怒りながら。「それでは、担当者に…」と引越し手続きの担当者に回される。また一から説明。結局、6月までかかると言われる。

 

 このころ、NTT西日本で顧客DBのトラブルがあり、いろいろ止まっている、という情報をツィッターで知った。検索したら、どうも関係があるような気がする。情報によると、トラブルの解消は6月上旬以降になるよう。この件、ソフトバンクとのやりとりでは、何も言われていない。だから実際に関係があったのかどうかもよく分からないが、まぁ関係があるのだろうと判断して、もうしばらく待つことにする。

 

 6月10日、代替機のソフトバンクエアが完全につながらなくなってしまった。どうなってるんや、とサービスセンターに電話。

 そうだ、この時は、電話の前に、トラブル対応チャットにも挑戦してみたのだった。チャットには機械が答える時と人間が答える時があること、機械の答えはただただ不快になるだけだ、ということを知る。人間とのやりとりになんとかたどりついても、結局らちがあかず、電話をするしかしょうがない、ということが分かったので、以降、チャットは使っていない。

 

 「なんとかは何番、かんとかは何番……(以下省略)」

 

 ようやく繋がった電話の向こうの人間が「インターネットがつながらない、ということですか、それでしたら…」と始めたので「とにかくこれまでの履歴を確認してれ」と強めに言う。エアの代わりにポケットWi-Fiを送る、という回答を得る。エアより、パワーが落ちるのは確実だが、エアの新しいのを送る、という話にはなぜかならないよう。

 ただ、同居人のPCはエアとの相性が特に悪いようで、エアじゃない方がいいということだったので、それは良かった。

 機械は急いで送るという話だったが、二日ほど、ネットの空白期間がまた生まれた。短波ラジオをまた引っ張り出してきて気まずい晩飯のお供にする。エアのトラブルは代替サービスの話。肝心の光回線本体の方はどうなっているのか。聞いてみても「開通したら必ず連絡するからもうしばらく待て」ということだった。

 

「しばらく」っていつまで待たせるんや。

「なんか、だんだん、永遠につながらない気がしてきたな」と同居人がいう。確かに。「つながったら、ちょっと寂しくなったりして」なんて話もする。

 

 二日後、突然、契約書が送られて来た。

「6月12日に開通、月の基本使用料幾ら」などと書いてある。まだつながってないのに、どういうことか。でも、まさかあれだけやり取りしているのに料金発生はないだろう、とぼんやりしていた。

 ポケットWi-Fiの機械が届いたが、10年くらい前の物のようで、大変非力だった。重い作業は全くできない。取説も簡単なものしかなく、通信量上限など、機能しているのかどうかよく分からない設定もあった。どうやら、一定程度使ったら、通信量をリセットしないとまずいようだった。こういうことについて何の説明もなかったが。

 

 この頃、リモート授業をするために非常勤先の大学の教室に行く、ということをした。基本的に動画データなどをアップしておく非同期オンデマンド型の講義形態をとっているが、週にひとコマだけzoomを使った同期型演習形式のコマがあるのだ。学生に発表させる時間だし、その途中で自分の回線が切れてぶち壊すのはどうしても避けたいから、安定したネット環境を求めてわざわざ出講した。ほとんど学生のいないキャンパスは、新鮮ではあったが。

 

 6月15日「工事日が決まりました」というショートメッセージが来る。向こうからの連絡は、電話か、登録している携帯電話番号へのショートメッセージなのだ。読んでみたら、引越し前の住所で何日に工事をする、と書いてある。また、エアの機械を返却しないと、罰則金が発生する、みたいな内容のメッセージも来た。

 どうなっているのか。

 

 サービスセンターに電話するしかない。

 「なんとかは何番、かんとかは何番……(以下省略)」

 

 ようやく、人間。平日の昼間にかければ、10分程度でつながることが分かってきたが、やはりちょっとは待たされる。

「インターネットがつながらない、というお問い合わせでしょうか?」から始まる。流石に切れて、わーわー言う。「担当に変わりますのでしばらくお待ちください」でまた5分待ち。次の担当者の「ネットがつながらない、ということですか?」が始まる。ぎゃーぎゃー言う。「それでしたら、担当に代わりますので…」となる。旧宅の工事云々は間違いだった、新居での光開通は、さらに2週間以上かかる、という話になる。「2週間かかる、2週間かかるってなんですねん?その間何してるんですか?」と文句を言うが「ショートメッセージで開通の連絡を必ずするから待ってくれ」とのことだった。「ほんま早よしてや、たのむで」と大阪人らしい圧をかけて切った。

  

 7月10日。2週間以上経過。メッセージは来ない。

 もしかして、住所の登録が間違っているんじゃないか。ふと思って、マイソフトバンクというユーザーページをチェックしたら、なぜか旧住所のまま登録されている。引越しの手続きは最初マイソフトバンクから行った。これもミスだったのかもしれない。昔ながらの、電話で申し込みをする方法の方が確実だったのでは。

 

 電話をする。

 「なんとかは何番、かんとかは何番……(以下省略)」

 ようやく人間。

「ネットがつながらないということですか?では工事担当に」が始まる。また一から説明。自動電話の時点で、こちらの生年月日を入れて、誰からの電話か確認しているくせに、なんで分からんのや、と文句を言う。オペレーターは強く言わなければ対応履歴を参照したりしない、ということを、この頃にようやく理解した。

 

 やはり住所の登録が、間違っていたよう。なんでや。これまでも新しい住所に代替機材や契約書など何度も送ってきているのに…。「今書き換えました。すみませんでした。これでもう大丈夫なはずです」というので、モデムとソフトバンクユニットをつなげてみる。案の定、何にも変わらない。「機械担当におつなぎします」となる。次の担当者の「ネットがつながらない、ということで承っております」が始まる。がーがー言う。それでも指示通りつなげてみて、リセットなどをやってみる。当然、つながらない。「ということは機械が故障している可能性が高いです」となり、新しいユニットが送られてくることに。それまでの機械は、引越しの時、自分で持ってきたもの。HPで引越しの所の指示見たら、そうしろとあったからそうしたのだ。

 

「それと契約書が来てるんですが、まさか料金発生してないですよね?」と念のために確認したら「お調べします」となり5分待つ。「…申し訳ございません…今月から発生しております」という返事。「どないなっとんねん、おう?」的なことをもう少しマイルドに発話。一度払ってもらったものはもう返せないので、この先、7月・8月分は基本料無料にする、という返答。それならまぁ仕方がない。「たのんまっせ」と引き下がる。


 7月13日。新しいユニットが来る。案の定、繋がらない。電話。「なんとかは何番…(以下省略)」ようやく人間。「ネットがつながらない、ということですか」から始まる。電源オンオフなどやらされる。当然変わらない。「お調べしてこちらから電話する」と言われる。「早よしてや、ほんまに!」と言って切る。マイルドにはできなかった。

 さすがに次の日に電話はかかって来た。どのランプが点灯しているか、前日に聞かれたことをまた聞かれる。もうつかれた。冷めた気持ちで淡々と状況を説明する。しばらく向こうで相談しているのを、例の「お待たせしております」の音楽を聴きながら待つ。この度は、設定が違った機械を送ってしまったようだ、設定しなおしたものをあらためて送る、ということになる。「はぁ、さよか、好きにしとくんなはれ」という気分になる。

 

 二日後、3台目のユニットが来る。当たり前のように、つながらない。電話。「なんとかは何番…(以下省略)」で人間。「やっぱ、つながりまへんで」というと、そうなると、NTTの問題だから、NTTから連絡させる、と言われる。NTTの人、工事に来た時ちゃんとネットつながっていたけどなぁ、と思うも「そうでっか、とにかく早よたのんますわ」と切る。

 NTTから電話。ちょっとイライラさせられる口調のオペレーター。「ネットがつながらない、と受けたまわっておりますが」から始まる。ソフトバンクは、ちゃんと伝達してるのか…。とにかく説明。五日後、作業員が来ることになる。作業員、来る。調べても異常はない、となる。もってきた端末のブラウザを示され「ネットちゃんと繋がっているでしょ」と確認させられる。はい、それは私も知っているんです。前に工事の人が来た時、ちゃんと繋がっていたんやから。

 NTTの作業員に、ソフトバンクの対応含め、いろいろ話してみる。「一度、ソフトバンクから担当者が来るのが当たり前と思いますけどね」と仰る。その通りだと頷く。この時、NTTのモデムにパソコンを直結すれば、PPPoE接続でネットが使えるということを教えてもらう。後でやってみて実際につながった。最初に契約した時にもらったパスワードなどがちゃんと生きているということのあかしだ。直結では一台しか使えないから、同居人と共用するためには、ソフトバンクのユニットにつながってもらわなければこまるのだが。

 

 NTTの人が来たけど、やっぱダメでしたよ、とソフトバンクに電話。省略したが、もちろん「なんとかは何番…」を経て。調査するから待て、という。「何を調査するの?待て、待て、ってずーっと待ってて、この状況ですよ」とできるだけ冷静に文句を言う。だいぶ修行が進み、声を荒げる回数は減ってきたようだ。「かならず二三日で連絡するから」というから「たのんまっせ」と切る。


 3日後、電話が来る。ソフトバンクから作業員を派遣することに決まった、日程調整の連絡をまってくれ、と言われる。「いつまで待つの?」「できるだけ早く…」という返事。

 

 連絡が来たのは11日後。この時、ブラウザを立ち上げて、これこれを入力したらどうなるか、みたいなことを試させられる。その結果「これはやっぱりNTTの問題のようだからそっちから連絡してもらう」と言われる。「え、ソフトバンクの職員が来るって話はどうなったの?NTTは実際にもう二回も来てるのよ、そっちからさっさと派遣したらどうよ」と文句を言うも、とにかくNTTからの連絡を待ってくれ、の一点張り。まだまだ解脱には遠かったようで、ぎゃーぎゃー言ってしまう。小さい人間だ。電話口の非正規職員に怒っても仕方がないって分かってはいるんですけどね…。

 

 次の日、NTTからかかって来る。「ネットがつながらない、ということでソフトバンクから調査依頼があったのですが…」から始まる。訪問するから日程を、となる。おたくからは二度も来てもらっているんだから、無駄骨に終わる気がしますよ、という話をする。向こうも記録を見て「そうですよね」ということになり、改めて、これまでの経緯をこちらから詳しく話す。ソフトバンクとの電話のやり取りで、これこれこういうことをチェックさせられて、それが問題だってなったのだが、ということを伝える。それも全く伝わってないらしい。「そうですか、しかし、それはソフトバンクのユニットを通さないと見られないものだから、ユニットと連携できてないと見られなくて当然ですよ。やはりソフトバンクの問題だから、その旨、ソフトバンクに返答します」と言われる。どっちのせいか、私ら素人にはわからんので、プロ同士、連携とって確認して、とにかく開通してくれとお願いする。

 

 次の日、ソフトバンクから電話。「当社の担当者を派遣します」ということにようやくなる。これはあくまでも調査で、訪問したからと言って、必ずしも開通するわけではない、という、よく分からない念を押される。聞くと、担当者は東京から来るという。まさか、大阪にソフトバンクの作業員がいないなんて想像もしてなかったから、驚く。代理店やらなんやら、町中にあるのに、現場に派遣する人員をひとりも確保していないなんて、なんていびつな通信会社組織なのだろう。「北海道や沖縄でも東京から派遣になるのか?」「そうです」とのこと。そりゃ、担当者の派遣を渋るはずだ。自分が損をするわけではないが、とてつもなくもったいなく感じ「無駄足に終わる気がするが、本当に大丈夫なのか、まだリモートで出来ることがあるのじゃないのか」なんてこちらが気をつかってしまった。でも、とにかく、来て開通させてもらうしかない。

 8月12日以降、いつなら空いているか、と聞かれ、一番早い12日を指定する。ポケットWi-Fiが頻繁に止まるようになったから交換してくれというのも頼む。(最初のやつは10年以上前の製品に見えたが、今度のは5年前くらいの感じで、だいぶマシになった。)

 

 次の日電話が来て「8月12日はお盆休みで無理だったから他の候補日を出してくれ」と言われる。なぜ、確認してから話を回せないのか。あきれながら、盆明け最速の8月16日に決める。


 当日。ソフトバンクから派遣された人が来た。機材を入れたスーツケースを引きずって、東京から私の家に直行してきた感じだった。コミュニケーションがとても苦手そうなパソコンオタク風の若いお兄さんで、これまで来たNTT作業員はみな作業服姿だったが、普段籠っている自分の部屋からそのまま出てきたかのようなラフな恰好だった。「実は超有能なハッカー」と見えないこともない。

 ちょっと不安にはなったが、見かけなどはどうでもよい。大学で、コミュニケーションが苦手な若者は沢山見て来たし、そういう子にも向いた仕事があるんだな、良いことだな、という気持ちにもなる。パソコンをつなげ、あれこれ、データをとる作業をする。話を聞くと、この日はうちの対応だけで大阪に泊りだという。ソフトバンクの現場技術者は、数人しかいないよう。お兄さんも、日本中、あちこちに行くらしい。「北海道は多いんですよね」なんて言っている。大阪から出られない生活を続けている自分には、うらやましくも感じた。ソフトバンクの正社員ではなく「まぁ、下請けです」とのこと。

 調査の結果、やっぱりNTT側の問題だ、ということになった。専門的なことを聞いてもよく分からないが「払い出し2000が来ないといけないのに来ていない」というようなことを言っていた。またNTTにまわされ、作業員が来て、問題ない、ソフトバンクの機械の問題だ、と言われて帰られて、またソフトバンクに電話をかけて…、という今後の展開が見えてくる。無限ループのようだ。

「NTTは『ソフトバンクのユニットとつながってないから当然だ』なんて言っていたけどどうなの?」と食い下がってみる。上司らしき人に電話をかけて「お客さんが、NTTがこれこれこれ、と言っていた、と言ってるんですが…」と相談するお兄さん。電話の向こうで「NTTの勘違いだろ」と言っているのが漏れ聴こえた。お兄さんは「勘違い…」と反復し、表情の薄い顔に微かな笑いを浮かべた、ように見えた。「勘違いだそうです、ログをとったので、それをNTTに渡すので、向こうも今度は分かると思います」という。そうですか、なら分かりました、とにかく、そちらでNTTに伝えてください、と言って送り出す。お兄さんは、大阪のホテルでどんな夜を楽しんだのか。緊急事態宣言下でなくとも、飲みに行ったりする感じではなさそうだから、ゲームでもしていつも通りの過ごし方をするのだろうか。それは、北海道や沖縄に行っても同じなんだろうか…。


 とにかく、ソフトバンクからの作業員来訪の結果は「変わらず」だった。ソフトバンクから電話がかかってきた。「調査結果はこれこれです」と、さっき直接、作業員の人から聞いた内容の反復。というわけで、NTTからの連絡を待ってくれとのこと。「とにかく、早よ、してよ」と力なく言うしかない。

 ちょっと前にショートメッセージで今月の支払いとして工事代金2万幾らという請求が来ていた。「これ、どうなっているの?」というのも確認。「キャンペーンで工事費かからないはずでしょ」と言うと「新規契約でございますよね、では新規契約のキャンペーン窓口におつなぎします」と言うから「チョ、チョー待てよ」とキムタクばりに話を止めて「新規契約なんかしてへんで、引越しの手続きでっせ」と伝える。「一度解約されて、新規契約だとお聞きしていますが」と訳の分からないことを言われ、そんなわけあるか、ちゃんと確認しろと、と大声で怒ってしまう。修行が進んだ、なんてとんだ勘違いだった。

 

「しばらくお待ちを」となり、いつもの音楽が流れ、「こちらの間違いでした、でも料金は一旦支払っていただいて、後程お返しするということでお願いできないか」ということを言われる。理不尽だと思いつつも、最終的にタダになればいいから「ほんま、頼むで、しかし」と横山やすし的に答えるしかなかった。

 翌日、NTTの人から電話が来る。テキパキして、かつ感じのいい人間的な女性だった。「直結でネット見てられるんですね、では、パソコンの確認お願いできますか」ということで、言われるままにクリックしていき、イーサネットの確認をする。「どういう数字になってますか」と聞かれ、画面に出たものを読み上げる。「あ、それでしたら、大丈夫です」という答え。やはり、ソフトバンクが言っていることは間違いで、NTTは問題ない、という話だった。どっちが間違っているか、素人の私は分かるはずがないから、とにかく、そちら同士で何とかしてくれ、と伝える。

 次の日、ソフトバンクから電話。NTTからの回答はこうだった、と言われる。それは、前日に聞いている。ソフトバンクとしては、NTTの問題だというのは変わらないが、対応を断られた、ではどうしたらいいか、これから検討してまた連絡します、ということだった。

 それから、10日。

 

 まだ何の連絡もない。(イマココ)

 

 つづく