2020年9月2日水曜日

西長堀から難波、心斎橋


 ミナミ方面に行った。昨年末以来か。関東大震災時の朝鮮人虐殺の歴史をなかったことにしよう、という動きに反対するアピールがあるとツィッターで知り出かけることにする。尼崎に引越して、大阪に出てくるのに電車賃がかかるようになった。長い間、自転車圏だったので、大きなハードルになった。仕事があれば、移動の途中で立ち寄ったりするが、4月以降は遠隔になってそれもなくなった。コロナがどれほど流行しているかわからない人混みに用事もないのにわざわざ出かける必要もなく、足が遠のいていた。抗議の趣旨に賛同したのはもちろんだが、出かける目的地が欲しいという気持ちもあった。その前に、大阪市立中央図書館に寄ろうと思った。梅田から御堂筋線で難波まで向かう。それなりに乗客はいるが、あの御堂筋線だ、と思うと3割減くらいには見えた。千日前線に乗り換え、西長堀へ。久しぶりだ。去年、一回くらい来た気はするが、覚えていない。これまでノーチェックだった韓国現代文学を読もうという気になって、いくつか見繕って借りた。椅子や、検索マシーンの数を減らして、滞在時間を短くする工夫がなされていた。来館者は、かなり少ないように見えた。時間がなかったので、滞在20分くらいで引き上げる。貸出カウンターでのやり取りも、カードは手渡ししないなど、感染防止の工夫がなされていた。あれでも職員は、怖いと思う。トイレで入念に手洗いをしてから、外に出る。地下鉄代を浮かすために、難波まで歩く。久しぶりだから散歩したいという気持ちもあった。西長堀のあたりは、いつか住んでみたいと思う地域だ。街中なのに、普通に生活している人も多いように見えるし、難波まですぐだし。道頓堀を眺め、ミナミに来たな、という気になる。久しぶりに歩くと、それなりに旅行気分になれないこともない。25分くらいでにぎやかなエリアに。新歌舞伎座の前のあたり、御堂筋に自転車道が整備されていた。それ以外は、それほど変わっていなかった。ただ、人出はかなり少ない印象だった。会場に近づくと、拡声器でアピールする声が聞こえ、人だかりができているように見えたから、思ったより多く参集しているのかなと期待感が沸いたが、アピール場所の横に大きな喫煙所があり、そこに人だかりができているだけで、アピールに参加している人は20人くらいだった。前にも似たような趣旨のアピールがあって来たが、その時よりもさらに少なかった。ツィッター知り合いにリアルで初めて挨拶したり、スピーチをしていた知り合いにも挨拶して、一応、参加している顔をして立っていた。喫煙所に向かう人々は、怪訝な顔をして通りすぎるだけ。怪訝な顔をする人は、まだマシかもしれない。拡声器をつかって話をしている前を、まるで、そこに誰もいないかのようなそぶりでタバコを咥えながら通りすぎる人も何人もいた。たぶん、本当に見えないのだろう。ミナミの街は、コロナの前までは、中国人、韓国人を中心に多くの外国人観光客でにぎわっていたが、ほとんど見かけなかった。数カ月で、すっかり変わってしまった。街中に、中国語、韓国語表記が増え、それに対して排外主義者がいちゃもんをつけてきたが、現状では、ほとんど無意味で役立たないものになっている。まるで、排外主義者が勝利した後の街のようだ。今回のテーマとも関連して、寒々しい思いを抱いていたら、スピーチをしている前を携帯で電話しながら若い女性が通り過ぎた。韓国語だった。ファッション、雰囲気からいかにも今どきの韓国人女子だったが、留学生だろうか。彼女も、何の集会であるか、一ミリも興味はないような感じで通り過ぎていった。何となく、可笑しくなり、また韓国に行きたいな、いつ行けるのだろうか、と思った。久々だったので、うろうろしたかったから、うろうろしてみた。精華小学校の跡地には、家電量販店のエディオンがオープンしていて、派手に客を誘っていた。インバウンド目当てのもので、中国語で大きく免税と掲げてある。当然ながら、閑散としていた。何度か行った立ち飲み屋の赤垣屋を覗くと、それなりに密な感じで、あえてここで危険なことをしなくてもいいかと、一杯飲むのはやめておいた。中央大通りを渡る。今週のベストテンか何かを紹介する液晶パネルでは、GLAYの新曲が流れていた。息が長いな、と思いつつ、戎橋まで行く。寂しい、と言うほど空いている訳ではないが、去年の暮れに来た時に比べたら、3分の1以下という感じか。キャッチの兄ちゃんがむなしく立っていた。戎橋から、グリコの看板を眺める。大勢の観光客が嬉しそうな顔で写真を撮りまくっていたのがうそのようだ。ぼんやり見ていると、橋の下の道頓堀から軽薄な音楽が聞こえてきた。船を借り切って、パーティをしている連中が、マイクを使って騒いでいた。「大阪、ナントカ~フォ~!」と訳の分からないことを叫びながら、私たちはバカですよと全力でアピールしていた。バカだけど、金は持っているのだろう。心斎橋の駅まで北上する。8時半とは思えない寂しさ。心斎橋筋でこれ、ということは、一歩、奥に入ったらもっとさびれているのだろう。コロナ対策、行政は何もしていないのに、感染者数が減る傾向にある(ように見える)のはなぜだろう、数字は全部ウソなのではないか、といぶかしく思っていたが、もちろん感染者の実数はあんなものではないだろうが、皆がそれぞれ警戒しておとなしくしているからこその、あの数字なんだな、と理解できた。平気で飲んでいる人らも沢山いるけど、普通ならこんなものじゃない。ただ、商売やっている人は、たまったもんじゃないだろう、とも改めて思った。いつか「戻る」のだろうか。簡単に「元」に戻るとはとても思えないのだが。外国人観光客を戻すには、最低でも数年はかかるんじゃないか。心斎橋から梅田へ。梅田でもまだ一人でちょっと飲みたいという未練にひっぱられ、新梅田食堂街をのぞいた。立ち飲み屋のひとつは休業の貼り紙を出していた。いつも行列ができていて、並んでまで食うほどのものかな、と通り過ぎることの多い串カツの松葉は、この店にしてはガラ空きでちょっと引かれたが、やっぱり、無駄遣いはやめておこうとまっすぐ帰ることにした。

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