2017年8月1日火曜日

伊勢行

どこか行きたい。どこでもいいから電車乗って遠くまで行きたい。何年も行っていない海にも行きたい。とつぶやいていたら、足代出すから海行かないかとお誘いをいただき、喜んで行く。つぶやけば、誰かしら願いをかなえてくれる(こともある)、カリスマニートのphaさん並だなと言いたい所だけど、私の場合は当然知人からの連絡だった。連絡をくれたのは、私の高校の同級生の分子生物学者の友だちのまぁ彼も私の直接の友だちといえるくらいには古い付き合いの生物学者の弟のT氏だった。今の時期しか採れないミサキギボシムシという変な虫の卵が必要だが、各地の海洋研究所に頼んでも忙しいと断られたとのこと。夏休みは、高校生理科教室などのイベントがあって、ああいう施設は多忙なのだそう。採集は危険も伴うのでペアで行くのが決まりだが、そういう仕事もあり皆忙しい、そこで暇そうな文系学者の私に、溺れないか見張っている簡単なお仕事ですとお鉢が回ってきた。何かしら大学に関係している方が、事務的にも出張費とかが出しやすいそう。自分も特任だったとき旅費の手続とかしたが、本当にそうで、フリーの人にまで、大学での役職をたずねる書類書かしたりする風習にうんざりした。それはそれとして、採点の山はあり、いろいろやるべきことはありながらも、今週から時間的には自由だし久々に海に行きたいな、と出かけたのだった。目的地は伊勢市あたり。足代が出るから安心して近鉄特急に乗って出かける。おそらく、初特急。特急なら2時間かからないのだな。次の日の朝一から作業開始ということで、行った日はホテルに泊まるだけ。外泊の機会が少ないため、ビジネスホテルは中々慣れない。寝たような寝なかったような中途半端な睡眠だったが、旅先のテンションがあるからまぁ元気に朝のロビーでT氏と会う。行動の概要を聞く。ついていくだけだが、一応、なぜその虫なのか、その研究は何のためにやるものなのか、などを聞く。大きく言えば、進化の謎を解く研究の一部である、ということはわかった。そのゴカイとミミズの一種にしか見えない気持ち悪い生き物が、大きな見方では、人間などに近いため、探究の価値があるということのよう。レンタカーで何か所か海水浴場の近くをまわる。自分は、助手席に座り、遠くに来るって楽しいなぁと思いながら、久々に見る地方都市の風景を眺めているだけだった。海底に穴を掘って生きている生き物なので、シュノーケリングしながら、砂底を見続けるという探索作業だった。ちょっと海に入ったりしながら、ぼんやり彼の作業を見ていた。潮が悪かったり、遠くの台風のため波が高めで視界が悪いのもあって、探索は難航。何か所も回って見るも、結局、見つけられなかった。以前から、友だちの弟としての知り合いだから、自分より若者というイメージで見ているT氏も40代半ばのオッサンである。長時間の探索にヘトヘトになっていた。自分も見よう見まねで、水中メガネをのぞいたが、クラゲくらいしか発見できなかった。

虫を探しに海へ挑む生物学者のT氏「密漁と間違われることが多いから本当は漁協とかに挨拶しておく方がいいんだけど」とのこと。そうでしょうね。


「運動してないおっさんが一番危険なんです」というT氏のアドバイスに従い、日焼け止めを塗り、Tシャツも脱がずにいたため、確かにダメージは少なかった。10年近く前に、この近くの海に来たのが、たぶん海水浴の最後だったはず。待望の海に入り、ひゃー、海だなぁ、と嬉しくなったが、ちょっと入ったらもう満足した。自分は、海の男ではないんだなぁと改めて確認する。今回は、目的があったから全然遊んではいないが、ただの海水浴として海に来ても、もうあんまり楽しくないのかもしれない。こういうものは、子供のための遊びである。ということは親のためのものでもあるだろう。子でも親でもない、自分のような、ただのおっさんにとって、「楽しかった場所」は頭の中にあればそれで十分で、今の喜びは今の自分にふさわしいものを自分で作り出さないといけないのである、という当たり前のことを確認する。それでも、どこかに行く、ということ自体、今でも十分楽しいが。海を見る、というのも、もちろん。夕方、軽く一杯打ち上げ。坊主で終わってしまった探索行に無念の思いを噛みしめつつ、この虫の卵が手に入らないなら、この夏はどんな実験をすべきかについてもう考え始めている生物学者の様子を見ながら、謎ばかりの大自然を相手にする科学者っていうのは、人類の先端にある仕事だなぁと改めて感心する。進化研究にまつわる「社会」の話など、面白い話を幾つか聞いたが、また今度。全世界で連携、競争しながら、大きな謎の解明に向かう人たちの一人として、虫を探すT氏。それをぼんやり観察するだけの自分。他にも、いろいろぼんやりと観察はした。伊勢志摩サミット後の、神道の気持ち悪い政治利用が以前より強めに街にあふれているように感じられる、この街の様子。妙に目立った公共工事。相変わらず、ぼったくる海水浴場の駐車場。地方都市の駅につどう人々の姿。などなど。折角観察したから、報告しておきたいが、これもまぁ、また今度にしておきます。


木戸修のようなパワフルな兄さんが、ガシガシに日に焼いていた。
色んな目的で人は海に集う。
ホテルには、聖書ではなく現代語訳「古事記」があった。伊勢志摩サミットで生まれたプロジェクト、でんでん、と説明があった。くだらないことにお金使うな。観光案内書にあった、めちゃくちゃ立派なフリーペーパー「JAPANISE」もその類か。阿川佐和子が、伊勢参宮をすすめていた。どこにでも登場するな、阿川佐和子って。宮崎美子と同じく、ザ・無難なお嬢さんという生き方。信仰上(?)の理由から、伊勢神宮は参っておりません。1000円やるから拝め、と言われたら、拝む位の信仰ですが、金払ってまで拝む気にはならない。

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