2017年8月20日日曜日

お馴染みの非日常

大阪市内に住んでいる自分にとって、京都までは身近な地域だが、滋賀県に入ると途端に「遠くまで来たな」という感覚になる。普通列車の旅では、京阪神圏、中京圏、首都圏は、都市型の快速列車で乗り心地もよく文字通り快速で飛ばす感じになるためストレスがない。大阪から東へ向かう場合は、米原までは普段からよく乗る新快速になる。だから電車自体は、珍しくはないのだが、京都駅を出て、山科、大津と行くと、普段とは違う気分になれる。この辺りまでなら、大阪まで通勤通学している人もいっぱいいる範囲だが。子供の頃は、福井に母親の実家があり夏休みに行くのが楽しみだった。湖西線が開通してからはあっち周りの雷鳥に乗るのが基本になったが、小学校低学年の時、はじめて一人でおばあちゃんの家までお出かけしたときには、湖東周りの急行「ゆのくに」というのに乗った、と思う。また、長浜に親戚の家もあって、何度も行った。今回みたいに東京まで18きっぷで行った時も、琵琶湖東岸のこの辺りを通っているのは、まだ出発したてという所で、だいたいは「久しぶりの遠出」を楽しんでいるような段階である。だから、滋賀県の風景は、自分にとっては、お馴染みの非日常の景色、という感じになる。近江富士も車窓から見えた。そういえば、びわ湖競艇の宣伝に蛭子能収が出ていたなと思い出す。観客が、「近江富士が見えるから2-3」と喋っているのを聞いて、蛭子が乗っかってあたる、という設定。最後に彼がつぶやく。「だからやめられないびわ湖ボート」。今自分は、ネットで買えるのに、わざわざ福島県まで競輪を見に行くのだ。ほんまにアホやなぁと思いながら。

野洲かどこか。駅前の市民ホールか何かに、「三山ひろし」という大きな垂れ幕がかかっていた。コンサートがあるのだろう。演歌歌手だということは知っているが、どんな歌を歌っている人かは知らない。バナナマンのラジオで、彼らが紅白歌合戦の副音声の担当をするという話をしていた時に、けん玉が得意な歌手としてネタにしていたので、紅白に出る歌手だということだけ知っている。演歌の人にとっては、紅白に出るかでないかは営業力の大きな違いだろう。先日行った伊勢でも、宇治山田駅前にコンサートができるようなホールがあって、何人か歌手の名前の垂れ幕がかかっていた。若い人が騒ぐような名前ではなく、一昔前の名前だったような。地方都市の人にとって、わが町に芸能人がやってくる、というのは今でも大きなイベントなのだろうか。歌手とか芸人とかプロレスラーとか、旅行く人生にはロマンチックなあこがれの気持ちがある。鉄道も子供の頃は大好きで、大人になったら乗りまくるぞ、と思っていながら、実際に大人になったら面倒くさくなって、そのうちそのうちと今に至ってしまった。そのおかげで、未だにこれくらいの電車旅でも十分旅情を感じられるくらい、新鮮さを味わえている、とも言えるだろう。

米原駅に到着。ここで、大垣行きに乗り換える。関西圏と中京圏の狭間であり、普通列車の旅のボトルネックになっている部分だ。駅に到着したら、すぐに乗客は走り出した。どうやら、席取りの必要があるらしい。乗り換えは跨線橋を渡る。本当に走らないと席がないのかは不明だったが、周りに流されて自分も走った。跨線橋の上に駅員がいて、ハンドマイクを手に「危ないですから走らないで」と叫んでいた。恒例の風景ということなのだろう。いつものことか。18きっぷシーズンだけなのか。駅員は「ケガをしたら何にもなりません」とか説教くさいことを何度も付け加えた。走るな、だけで十分なのに、こういうことを言ってしまうってことは、この人、たぶん普段はうっとおしいタイプだろうな、と勝手に想像する。大垣行は確かに混んでいた。でも、走るまでもなかったかもしれない。この後も何度も乗りかえたし、たったままの期間もあったが、とにかくほとんどは座りっぱなしなので、ちょっとくらい立っていた方が、肉体的にも楽だったりもしたのだ。大垣行きに乗り換えると、いよいよ、東へ向かう気分になった。

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